FARMING ON NOTO ISLAND
November 27, 2021

能登島から届く高農園のあくなき好奇心と大地のパワー
能登半島に抱かれるように佇む能登島に向かう道沿いに広がるのは、きらめく水面のたなびく穏やかな海。そこでは、生態系を崩さないよう細やかな注意を払いながら漁業が営まれています。この地に下りている里海という認証が人と海とが互いに助け合う姿をあらわしています。地域特有の情景を守るために人間ができるあたりまえの気配りがあるからこそ美しい自然環境を保つことができるという事実を実感します。
能登島に入ると群生する植物達が出迎えてくれます。標高120メーターの地で有機農業を営む高農園さんにとって、このワイルドな土壌が生んだ赤土は野菜作りの大切な基盤になっています。もともと食べ歩きを趣味にしていた美食家のご主人がこの地に魅了され、根をはることになり、やがてさまざまな出会いを経ていつしか土地を開拓して農業を初めていました。苦渋を舐めたこともあったけれど、その頃に出会った人脈がやがて現在の広大な土地との出会いをもたらし、全国の美食家を唸らせる多彩な野菜作りのアイデアの引き出しになっているそうです。
「農家だけで食えんかった頃、5年間漁師のアルバイトしてたんです。だから魚のことはだいたい知ってるわけですよ。だからだいたいこの魚に合わせるんじゃないかなって想定して野菜を作っています。その上で、あしらいでこれ使わない?とか、こういう酸味欲しくない?とかを提案するんですよね」

伝統とモダンを育む高農園の農業哲学
現在2ヘクタールほどの有機認証を受けた農園では、農薬も化学肥料もなるべく使わないエコ農法でさまざまな野菜が作られています。数千万年前には地底に潜っていたと言われる能登の大地に蓄積された生命の力、そして高農園さんのたゆまぬ愛情を受けて育った力強い野菜たちは、全国の名だたるレストランへと届けられてゆきます。
口にするとピリリと辛い二十日大根は火にかけると驚くほど甘く変化し、口の中で風味が増していくわさび菜や赤からし水菜は、その特徴を捉えてサラダに。日本人だからできる「口内調理」のファンタジーを連想しながら、旬の早めな和食からフレンチ、イタリアン、中華と納品先のレシピを想定してマエストロのように野菜の種類やサイズを調整しながら畑作りをしています。

「元々うちのテーマは伝統とモダンっていうのがあって、新しい野菜と伝統野菜に特化しています。能登の伝統野菜の中島菜や満願寺唐辛子など特徴的なものを作っていて、ちょっと普通じゃない部分を作りながらやるっていうのがうちならではじゃないかなと思っているんですよね」
高農園の野菜が美味しいのは、徹底した温度や湿度管理をはじめとした科学的な根拠に基づいた管理と愛情を受けて育てられているから。寒暖の激しい自然の中で野菜たちにあえて負荷をかけるように手をかけすぎずに発育を見守りながら、同時にがんばれと声をかけたり足音を聴かせて刺激を与えることで、野菜たちに愛情を伝えていく。声はかけども手はかけない、長い間の経験で生み出した飴と鞭のような栽培方法にその美味しさの秘密が隠れているのだそうです。

視点を届ける農家が描く秘めたる設計図
普通の農家とはちょっと違う高農園さん。その独創的なブランディング力にはもともと建築家であった着眼点に起因するのかもしれません。
「杉の葉っぱはジンにつけたら香りが出る。松の木や柿の葉を欲しがる人がいるように、価値を見出せる人にとっては価値があるものが自然にあることを見逃さないようにしています。例えば、畑の近くで実っているあけびの枝を切ってぽんと入れておく。それをお店の人がテーブルの飾りにすれば、興味のあるお客さんがこれどこでとってるの?となって、接客係にとっては次の会話につながりますよね」
食事の対話の中で農家とのつながりを垣間見ると、お客さんはレストランに対する親密度がグッと上がるもの。畑からテーブルへ。その繋がりは、ミシュラン・グリーンスターという実績にも繋がっています。環境に対する取り組みに前向きなレストランへの好感度が上がるにつれ、丁寧な畑に対する需要や認知も上がります。実直な自然農法と豊かな大地を守りながら共存するという里山の想いを繋げる細やかなプレゼンテーションが、数々のお取引先にグリーンスターをもたらしたそうです。

クリエイティブであり続ける
ワクワクの力
キッチンを主戦場とするシェフ達に新たな視点がインスピレーションとなることを見越して、メニューの糧になるようなメッセージを常に届けている高農園さん。そこには農家としての先見の明よりも美食家としての感性が生きているようです。
「あるお店で食べた時の経験をベースに、別の店でちょっと違う野菜を使った組み合わせを勧めててみる。誰だって同じことはしたくないですから、そこで違う品種や食材が、新しいレシピのインスピレーションになるんです。シェフの皆さんも毎日料理を考えているわけですから、それを考えてる先にどう?って提案してあげると喜んでくれるんですよね。だから気になるお店はとりあえず遠くても、弾丸でも良いから行きます」。
先日は、和歌山に片道6時間半をかけて食べにいってきたばかりだとか。
「例えば柑橘なんかでも、黄色にならないと使えないと思ってたものが、青ゆずみたいな感じで使ってもいいと知った。じゃあもう間引きしながら使ってもいいのかなとか、そういう気づきがあるんですよね。とりあえず僕らも食べに行って、見て勉強させて頂いて。あ、そうなんだってっていうことが次に繋がっていくんです。
やっぱり、飽くなき探究心で新しい品種をどこかで見たら植えたいとか、これ面白いね!っていうのがなくなったら終わりかなって思ってるんで。とりあえず、興味が赴くままに食べに行くし、興味が赴くままに植えるし。たまにスタッフから、なんですかそれ!っていうことはありますけどね」

高農園の美味しいもの、面白いものへのパッションは距離を超えて人々を魅了していき、これからも能登島から発信する料理界の力強いパワースポットであり続けるのでしょう。
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