FERMENTATION CULTURE OF NOTO
December 25, 2021

古来から伝承された能登の発酵文化と循環するいのち
能登半島は「発酵王国」と呼ばれるほど、豊かな発酵文化が息づく土地です。かつて交通インフラも物流も発展していない時代、能登は「陸の孤島」と呼ばれていました。厳しい地理的条件の中で長い冬を乗り越えるためには、自分たちで食物を長持ちさせる必要がありました。先人たちは知恵をしぼり、失敗と成功を重ねながら今の発酵食品を作り上げてきたのです。その歴史は長く、1000年以上前から魚貝を使った発酵食品を作っていたとの記録も残されています。能登の「漬ける・発酵する技術」は世界農業遺産にも認定されています。
能登が発酵王国と呼ばれる所以は、気候も大きく関係しています。能登は日本の中でも年間降水量が多く湿度も高いため、食品を乾燥保存しようとしても水分をとばす前に腐敗してしまうことがあります。そのため微生物の力で食品を発酵させる技術が発達したといわれています。湿度の多い夏に発酵が進み、一定の低温を保つ冬の寒さが発酵に適した環境だったのです。また、発酵の基本材料となる米と塩が豊富に採れたことも関係しています。

発酵の代表的なものには日本酒や味噌、醤油といった伝統的なものがありますが、能登には十数カ所の小さな酒蔵があり、銘柄の数は100を超えるなど日本酒造りが盛んな土地です。その日本酒を作る職人集団の最高責任者を「杜氏」と呼び、能登には「能登杜氏」と呼ばれる杜氏集団がいます。「能登杜氏」は、岩手県の「南部」、新潟県の「越後」、兵庫県の「但馬」と共に「日本四大杜氏」に数えられ、北陸3県を中心に中部、関西、関東地方まで、今もその技術を広く継承しています。
里山里海の恵みを無駄にしない
また、能登では「いしる(いしり)」「なれずし(ひねずし)」「塩辛」「このわた」「こんかいわし」などの魚介類を使うものや、「かぶらずし」「大根ずし」などの野菜と魚を合わせたものなど、豊かな里山里海ならではの発酵食品が多く存在します。これらはかつて、保存食としてだけでなく、いのちをつなぐ貴重なタンパク源でもありました。中でも代表といえるのが「いしる(いしり)」です。魚の身や内臓を塩に漬けこんで、じっくり自然発酵させてつくります。外浦ではイワシやサバ、内浦ではイカを材料としています。「身も骨も内臓も無駄にしない」という能登の人たちの、いのちへの敬意が感じられる発酵食品といえます。1年から3年ほど経てば、旨味がぎゅっと詰まった独特な風味をもつ魚醤になります。野菜を煮浸しにしたり、隠し味に使ったり。昔から食卓に欠かせない調味料として親しまれています。
「寿司の元祖」ともいわれる「なれずし(ひねずし)」も能登の発酵食品を語る上で欠かせません。塩漬けした魚を米とともに漬け込んで熟成させれば、乳酸発酵により骨まで柔らかく、チーズのような優しい酸味が生まれます。なれずしは、昔から「特別なごちそう」としてお祭りの席で振る舞われてきました。祭りのときに来客揃ってその年のなれずしの品評会をする、というのが能登の人たちの楽しみの一つでもあります。同じ人が前年と同じように漬けても、その年の気候条件によって味が変わるという面白さもあります。

猛毒すら消してしまう発酵の不思議
能登では糠漬けも盛んです。「ふぐの卵巣の糠漬け」や「こんかいわし」などの魚のこんか(米糠)漬けはその一例です。「ふぐの卵巣の糠漬け」は猛毒のフグの卵巣を塩漬けしたあと、糠漬けにして2年間以上発酵させることで解毒作用が働き、芳醇な香りを放つ逸品に生まれ変わります。先人の知恵と、食を楽しもうとする豊かな心から生まれたこれらの発酵食品は、今も母から子へ、あるいは名産品となり次世代に受け継がれています。
tefutefuでは、能登の伝統的な食材と高農園さんのお野菜を詰め込んだ『tefutefu(food)box』を受注販売します。詳しくはサイトやSNSでお知らせします。お楽しみに!
tefutefu (food) boxは
こちら