L’ATELIER DE NOTO
April 1, 2022

皿の上で能登の食材が力強く輝く
古民家フレンチレストラン
古くから漆器業や漁業で栄えた港町、輪島。海にも山にも近いこの町は、豊富な資源で溢れています。海のそばの朝市では地元のお母さんたちがテントを連ね、獲ってすぐの活きのいい魚介や瑞々しい野菜を売ってくれます。そんな朝市通りからほど近くにあるフレンチレストラン「L’Atelier de NOTO(ラトリエ ドゥ ノト)」は、能登の食材を生かした独創的なフレンチが人気の一つ星レストラン(ミシュランガイド北陸2021 特別版)です。塗師屋造りの趣をそのまま生かした店構えは、そこがレストランだと気づかないほど暮らしの中に溶け込んでいます。リノベーションされた店内は落ち着いたモダンな雰囲気。庭園や大きな蔵が風情ある佇まいで出迎えてくれ、ここでの特別な体験を期待させてくれます。

レストランを通じて能登の魅力を伝える
オーナーシェフの池端隼也さんは輪島で生まれ育ち、高校卒業後は大阪の名店やフランスの星付きレストランで研鑽を積みます。もともと地元は早く離れたい場所でしかなかったというシェフの心を動かしたのは、能登の食材が持つポテンシャルの高さでした。
「母の看病のためフランスから帰国してしばらく輪島にいたことがあるのですが、そのとき塗師屋にケータリングを頼まれたんです。そこで初めて〝ここにはどんな食材あるんやろう〟と探し始めて。そしたら驚くことに、何を食べても美味しかった。山のもの、海のもの、種類が豊富で山菜もある、生産者もいっぱいいる。とたんに輪島の町がキラキラして見えて。ここには宝物がいっぱいある、すごいな、と」
今まで気にも留めていなかった故郷の魅力に心を奪われた池端シェフ。かつて勤めていたフランスの片田舎にあるレストランで世界中から美食家たちが訪れていた経験から「田舎でも料理で人は呼べる」と確信し、この地で新たなスタートを切ることを決めました。食材との出合いの感動をそのままに「レストランを通して能登の魅力を発信する」というコンセプトを打ち出します。

生産者と一緒につくる シェフの料理哲学
池端さんは、漁港や朝市、畑、牧場、山の中、どんな場所でも自らの足で産地を訪ね、素材と向き合い、生産者の話を聞くことを日々の日課にしています。
「例えば、ここだと魚一匹とっても誰がどんな風に獲っているのかが分かる。水深何百メートルのものを何人くらいで揚げて、どこでどういう締め方をしてレストランにくるのか。そこからもう料理は始まっているんです。生産者と一緒に料理してる感覚に近いですね」
時には地元の漁師を集めて勉強会を開くことも。
「高値が付いている九州ののどぐろと輪島ののどぐろは何が違うのかを漁師たちと食べ比べてみたり、高い処理技術を持つ隣町の漁師と地元の漁師を引き合わせたり。自分たちが獲った魚に正しい価値をつけられるようになれば、大量に獲って市場の値段がぐんと下がることもなくなりますし、長い目で見れば水産資源を守ることにも繋がるんです」
生産者から得るものも多いと話す池端シェフ。野菜を仕入れている能登島の高農園は全国のシェフと取引があるため、色々学ばせてもらうことも多いそう。送られてきた野菜の中に、一つも使ったこともないような野菜が挑戦状のように入れてあったりするのだとか。ともに高め合いながら、楽しみながら、生産者との関係を築いています。

里山里海のめぐみを詰め込んだスペシャリテ
池端シェフの料理は独創的でありながら、不思議と食材そのものの味をより強烈に残します。どのお皿からも感じるのは、食材への深い愛情とリスペクトです。
「例えば、輪島の真フグは水分が多いけど厚く切って出した方が食感が出てより“フグを食べている”という感じが得られる。そのために2日かけてゆっくり水気を抜く。食材がどうやったら生きるかに技術と神経を使っている感じです」
また、能登牡蠣と七面鳥のスープの掛け合わせなど、池端シェフならではの斬新な食材の組み合わせは、幼少期の原風景や家庭料理がルーツになっているそうです。
「小さい頃から食べていた発酵食はもちろん、ブリ大根、牡蠣鍋、そういったものをベースにしながらあの手この手で新しい食べ方の提案をしている感じです」
池端シェフの能登への思いが詰まったスペシャリテが能登の里山里海のめぐみをぎゅっと詰め込んだ一皿。能登中島の小松菜のクレープの上に能登115のコンフィ、海藻のパウダー、鯖のマリネ、シェフ自ら山に入って採った野草、春蘭の酢漬けが鮮やかにのっています。里山の恵み、里海の恵み、そして能登の人が織りなす恵みがぎゅっと一皿の中に表現されています。

食材に最大限のリスペクトを
食材を生み出す生産者に最大の敬意を払う池端シェフ。豊かな資源がずっと続くように、仲間とともに環境保全や生産者への支援にも乗り出しています。例えば、経営難の牧場を立て直そうと、牧草のみを餌として飼育するグラスフェッドで育てた牛のミルクに価値をつけたいと模索したり、唐川菜と呼ばれる能登野菜の知名度アップにも奔走しています。
「たくさん採れて仕方ない、と段ボールいっぱいの野菜を持ってきてくれる農家さんもいます。そんな時はアイディアと自分の腕でなんとかメニュー化できないかと考えます。そういうパターンがあってもいいかなと思っています。この場所では、意外にそういうことが大事だったりするんです」
郷土愛に溢れた能登の愛すべきフレンチ。シェフの世界に身を委ねて、能登の恵みに思いを馳せることのできる、唯一無二のレストランです。
L’Atelier de NOTO
石川県輪島市河井町4-142
https://atelier-noto.com


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